024)クラッシュ

ai_da2006-03-06

製作年度:2004年
製作国:アメリ
上映時間:112分
監督:ポール・ハギス
出演:サンドラ・ブロックドン・チードルマット・ディロン
ストーリー:クリスマス間近のロサンゼルス。黒人刑事のグラハム(ドン・チードル)は、相棒であり恋人でもあるスペイン系のリア(ジェニファー・エスポジト)と追突事故に巻き込まれる。彼は偶然事故現場近くで発見された黒人男性の死体に引き付けられる……。

なんと、アカデミー作品賞を受賞する前日に観ました。
ノミネートされていることは知っていたのですが、他の作品が本命と言われていて、『クラッシュ』はそんなに注目されていなくて。。。 でも凄く気になっていたところ、あと数日で公開が終わることを知ったのです。急いで観に行きました。


脚本が素晴らしい! 人種差別という暗く重いテーマ。そして、たくさんの主人公とそれぞれの人生や葛藤を描いているのに、凄くわかりやすかったです。
そして俳優陣の演技も素晴らしかった。苦悩や怒り哀しみが言葉でそして表情で、痛いくらいに伝わってきました。
俳優それぞれが主人公、そして音楽も主人公でした。BGMというよりは、音楽が主になるシーンもありました。映像との調和が憎いくらいにかっこよかった。


観ながら、そして観終わった後、『マグノリア』を思い出しました。
マグノリア』もたくさんの主人公がそれぞれのストーリーを演じています。同じように焦燥感や怒りを抱えながら生きています。そしてラストのすがすがしさ(胸になんだか苦しいものは残るのですが)も同じ。
マグノリア』も大好きな作品なのですが、人種差別という重いテーマをわかりやすく表現している『クラッシュ』はそれ以上の出来でした。。。


2つのシーンで涙がボロボロ溢れ出し止まりませんでした。
1つは、女性が事故車から助け出されるシーン。「あなたに助けられたくない」そう叫ぶ人種差別をされ心に深い傷を負った女性と、命がけでその女性を助け出そうとする人種差別をした警官。彼は何故その時命がけで女性を救ったのでしょう? 警官だから? そして、女性に叫ばれて前夜の行いを悔いたのでしょうか。。。
運ばれていくときに女性は警官をじっと見詰めます。殺したいほど憎んでいた相手だったのでしょう。その彼に命を助けられた彼女の目に、彼はどのように映っていたのでしょうか。
もう1つのシーンは"透明なマント"を身に着けたちっちゃな少女が、父親を助けるシーン。。。 あのシーンのスローモーション、そしてうろ覚えなのですが音楽に泣かされました。こんなちっちゃな子が!? 神様って本当にいるの!? そう叫びたくなるシーンでした。
でも、神様はいたんですね。
今考えてみると、どちらのシーンも「何でこんなことに!?」「あのときこうしていなければ!!」という哀しみに近い憤りを感じた瞬間に涙があふれました。
この映画では色々な場面で同じような憤りや悔しさを感じました。。。


人は他人を差別することによって自分が優位になったような気分になるのでしょう。そして差別することによって自分は差別されないだろうという安心を覚えるのでしょう。
人種差別はその人のせいではない。だからこそ無くならない問題なのかもしれません。でもこれからもその差別と戦っていかなければいけない人はたくさんいて、、、 だからこそ時にはこのような作品を観て、色々と考えなければいけないのだと思いました。
人種差別や戦争の映画は暗いから苦手です。でも『クラッシュ』の脚本や俳優、そしてエンディングの良さでそんな気持ちは払拭されました。こんな素晴らしい作品ならいくらでも観たいと思いました。


はてな年間100本映画クラブ/24本目)